菜根譚1「山林の楽しみを談ずる者は」に出てくる言葉の意味
- 山林田舎。退官して、田舎に閑居する。
- 名利名声利欲。
- 情こころ。念慮。
菜根譚2「世を渉ることを浅ければ」に出てくる言葉の意味
- 機械からくり。たくらみ。権謀術数。荘子に「機械ある者は必ず機事あり、機事ある者は必ず機心あり。機心、胸中に存すれば、則ち純白備わらず。純白備わらざれば、則ち神生定まらず。神生定まらざる者は、道の載せざるところなり。吾知らざるにあらず、羞じてなさざるなり。」(天地)とある。
菜根譚3「君子の心事は」に出てくる言葉の意味
- 心事心ばえ。心術。
- 玉韞み珠蔵し珠玉のように大切に包みかくす。論語に「子貢曰く、ここに美玉あり、匱に韞めてこれを蔵せんか、善賈を求めてこれを沽らんか、と。子曰く、これを沽らんかな、これを沽らんかな。我は賈を待てる者なり、と」(子罕)とあり、また荘子に「金を山に蔵し、珠を淵に蔵す」(天地)とある。
菜根譚4「勢利紛華は」に出てくる言葉の意味
- 紛華豪奢華美。なれやすく人を堕落させやすい。史記に「子夏、門人の高弟なるよりして、なお云う、出でては紛華の盛麗を見て説び、入りては夫子の道を聞いて楽しみ、二者、心に戦いて未だ決する能わず、と。しかるを中庸章句以下、失教に漸漬し、成俗に被服するものをや。」(礼書)とある。
- 智械機巧智巧機械に同じ。韓非子に「聖人の道は智と巧とを去る。智巧去らずんば以て常となしがたし。民人これを用うれば、その身殃多く、主上これを用うれば、その国危亡す」(揚権)とある。
菜根譚5「耳中、常に耳に逆うの言を」に出てくる言葉の意味
- 耳に逆うの言忠告、諫言。説苑に「良薬は口に苦けれども病に利あり、忠言は耳に逆えども行に利あり」(正諫)とあるによる。
- 心に払るの事重い通りにならぬこと。孟子に「天の将に大任をこの人に降さんとするや、必ずまずその心志を苦しめ、その筋骨を労せしめ、その体膚を餓えしめ、その身を空乏にし、行うこと、そのなさんとするところに払乱せしむ。心を動かし性を忍ばせ、その能くせざるところを曾益せしむる所以なり」(告子下)とある。
- 纔に是れ(纔是)俗語。それでこそであるの意。
- 鴆毒猛毒。鴆という鳥の羽を酒にひたすと猛毒を生じ、その酒を飲むと忽ち死ぬという。古来、毒薬の代表として有名で、国語に「鴆を酒に寘く」(晉語二)とか、左伝に「宴安は鴆毒なり、懐うべからず」(閔公元年)とか見える。
菜根譚6「疾風怒雨には」に出てくる言葉の意味
- 見るべし(可見)してみると。語気の上から返読せず先に読む。
- 喜神喜び楽しむ気持。
菜根譚7「肥辛甘は真味にあらず」に出てくる言葉の意味
- 肥「」は濃い酒、「肥」は肥えた肉。共に濃厚な味。
- 只だ是れ(只是)ただだけである。語意を強めた表現。
- 至人道に達した人。荘子に「至人は己なく、神人は功なく、聖人は名なし」(逍遙遊)とか、「至人の心を用うるは鏡のごとし。将らず迎えず、応じて蔵せず。故によく物に勝えて傷なわず」(応帝王)とか見える。
菜根譚8「天地は寂然として不動かずして」に出てくる言葉の意味
- 寂然として動かず静まりかえってそれ自体動かない。易経に「易は思うなきなり、為すなきなり。寂然として動かず。感じて遂に天下の故に通ず」(繫辞上)とあるによる。
- 気機陰陽二気のはたらき。「機」は、はずみ。
- 貞明正しく明らかなこと。易経に「天地の道は貞にして観すものなり。日月の道は貞にして明らかなるものなり」(繫辞下)とあるによる。
- 喫緊的の心思火急の場合に対処する心がまえ。喫緊は火急適切。
- 悠的悠々閑々たる。「」は閑に同じ。
菜根譚9「夜深く人靜まれるとき」に出てくる言葉の意味
- 妄・真妄心(煩悩雑染心)と真心(自性清浄心)。衆生心は根本的には自性清浄心であるが、自性清浄心は他方に同時に煩悩雑染心と相並び、和合、不和合が説かれる。これにつき大乗起信論(岩波文庫、宇井伯寿訳)に詳しい。
- 大機趣応用自在なはたらき。
- 大慚忸根本的なざんげ。慚も忸も恥じる。
菜根譚10「恩裡に由來害を生ず」に出てくる言葉の意味
- 恩裡恩情の厚いうちに。「裡」はうち。韓非子に「彌子の行いは未だ初めに変ぜざるなり。しかるに前の賢とせらるる所以を以てして、後に罪を獲るものは、愛憎の変ずればなり」(説難)とある。また杜甫の詩に「手を翻せば雲となり手を覆えば雨となる。紛々たる軽薄何ぞ数うるを須いん」(貧交行)とあり、人情の反覆常なきを説いている。
- 払心心にもとる。思うにまかせぬ。前出(前集五)。
- 物外の物世俗を越えた世界に見られる真実なるもの。
- 身後の身死後の生命。
菜根譚11「藜口莧腸の者は」に出てくる言葉の意味
- 藜口莧腸粗食をいう。「藜」(あかざ)や「莧」(ぬめりひゆ)を吸物にして口腹を満たすこと。
- 衣玉食美衣美食をいう。「衣」は天子の礼服、竜の模様を刺繡したもの。
菜根譚12「面前の田地は」に出てくる言葉の意味
- 面前の田地現世の心構え。「面前」は次句の「身後」に対して生前の意。原文の「的」は「の」(之)。「田地」は心田、心地、心境。
- 放ち得て寛くして十分に開放して広くする。「得」は動作・状態の進度を示す助辞。「流得」も同じ。
- 不匱乏しからず。不足がない。
菜根譚13「径路の窄き処は」に出てくる言葉の意味
- 径路こみち。「径」はこみち。論語に「行くに径に由らず」(雍也)とある。
- これは是れ(此是)これこそである。
菜根譚14「人と作りて甚の高遠の事業」に出てくる言葉の意味
- 人と作りて人物となる。「作」は自動詞、為に同じ。
- 甚のなきも(無甚)「なにものことはない」の意。「甚」は「甚麼」に当たり、なに(何)の意。
- 擺脱し得れば払い落すことができれば。「擺」は排に同じ。
- 物累外物に心をわずらわされる。荘子に「知と故とを去り、天の理に循う。故に天災なく、物累なく、人非なく、鬼責なし」(刻意)とあり、郭象注に「累は物に逆うに生ず」という。
菜根譚15「友に交るには」に出てくる言葉の意味
- 一点の素心一点の純粋な心。「一点」は三分に対し、「少なくとも一点は」の意で、「すこし」の意ではない。「素心」は本心。陶淵明の詩に「ただ願わくは桑麻成りて、蚕月には紡績するを得ん、素心正にかくの如し、径を開いて三益を望む」(帰園田居)とある。
菜根譚16「寵利は人前に居ることなかれ」に出てくる言葉の意味
- 人前、人後他人より先に取る。他人に遅れを取る。李白の詩に「気岸は遙かに豪士の前に凌ぎ、風流は敢えて他人の後に落ちんや」(流夜郎贈辛判官)とある。
菜根譚17「世に処するに一步を譲るを」に出てくる言葉の意味
- 張本下地。伏線。白楽天の文に「故に六偈を作り、いて仏法僧の前に唱え、以て因を起し縁を発して、来世の張本となさんと欲す」(六讃偈序)とある。
菜根譚18「世を蓋うの功労も」に出てくる言葉の意味
- 世を蓋う一世をおおい圧する。器量や功名をいう。史記に「力は山を抜き気は世を蓋う」(項羽本紀)とある。
- 当たり得ず相当することができない。堪えられない。原文の「不得」は動詞について不可能を示す。
菜根譚19「完名美節は」に出てくる言葉の意味
- 以てべし(可以)できる。二字で可能を示す。
- 推す推しつける。
- 光を韜み徳を養う外に現われる才能の光をつつみかくし、内に蓄える道を一層養うようにする。梁の昭明太子の文に「聖人は光を韜み、賢人は世をる」(陶淵明集序)とある。
菜根譚20「事々、個の有余不尽の意思を」に出てくる言葉の意味
- 個「一個」の略。冠詞的用法で、次の「意思」を指示し、「意思というもの」というほどの意。
- 意思気持。
- 造物造物者。列子に「造物者は、その功は妙に、その功は深く、まことに窮め難く終え難し」(周穆王)とある。
- 盈みつ(満)。「盈つれば虧くる」は天地の理法。易の謙卦に「天道は盈つるを虧きて謙に益し、地道は盈つるを変じて謙に流き、鬼神は盈つるを害して謙に福し、人道は盈つるを悪んで謙を好む」(彖伝)とある。
菜根譚21「家庭に個の真仏あり」に出てくる言葉の意味
- 種の真道真正の道者。「種」は「一種」の略。冠詞的な用法。
- 形骸両つながら釈け心は勿論、からだまでうち解ける。「両」は我と彼。
- 調息観心気息を調えると、内心を観照すると。前者は道士の養生、後者は仏者の座禅をいう。
菜根譚22「動を好む者は、雲電風燈」に出てくる言葉の意味
- 死灰槁木火の消えた灰や立ち枯れになった木。荘子に「何ぞや、形は固より槁木のごとくならしむべく、心は固より死灰のごとくならしむべきか」(斉物論)とある。
- 止水流れない水。白楽天の詩に「動く者は流水を楽しみ、静かなる者は止水を楽しむ」(翫止水)とある。
- 鳶飛び魚躍る躍動する。はつらつたる。詩の大雅に「鳶飛んで天にいたり、魚淵に躍る」(旱麓)とあり、「中庸章句」に引用しているが、朱子は活潑潑地をいうと注している。この句は後集六六にも見える。
- 気象ありさま。ようす。
- 纔に是れそれでこそなのである。
菜根譚前集(名言・要約)
菜根譚1 道徳に棲守する者は菜根譚2 世を渉ることを浅ければ菜根譚3 君子の心事は菜根譚4 勢利紛華は菜根譚5 耳中、常に耳に逆うの言を菜根譚6 疾風怒雨には菜根譚7 肥辛甘は真味にあらず菜根譚8 天地は寂然として不動かずして菜根譚9 夜深く人靜まれるとき菜根譚10 恩裡に由來害を生ず菜根譚11 藜口莧腸の者は菜根譚12 面前の田地は菜根譚13 径路の窄き処は菜根譚14 人と作りて甚の高遠の事業菜根譚15 友に交るには菜根譚16 寵利は人前に居ることなかれ菜根譚17 世に処するに一步を譲るを菜根譚18 世を蓋うの功労も菜根譚19 完名美節は菜根譚20 事々、個の有余不尽の意思を菜根譚21 家庭に個の真仏あり菜根譚22 動を好む者は、雲電風燈菜根譚 前集意味 1-50菜根譚23 人の悪を攻めむるは菜根譚24 糞虫は至機なるも菜根譚25 玲高伝傲は菜根譚26 飽後に味を思えば菜根譚27 軒晃の中に居りては菜根譚28 世に処しては菜根譚29 憂勤は是れ美徳なり菜根譚30 事窮まり勢盛まるの人は菜根譚31 富貴の家は菜根譚32 卑きに居りて後菜根譚33 功名富貴の心を菜根譚34 利欲は未だ尽くは心を菜根譚35 人情は反復し菜根譚36 小人を待つは菜根譚37 寧ろ渾霊を守って菜根譚38 魔を降す者は、先ず自心を降せ菜根譚39 弟子を教うるは菜根譚40 欲路上のことは菜根譚41 念頭の濃やかなる者は菜根譚42 彼は富もてせば我は仁菜根譚43 身を立つるに一歩を高くして菜根譚44 学ぶ者は 、 精神を収拾し菜根譚45 人々に個の大慈悲あり菜根譚46 徳に進み道を修むるには菜根譚47 吉人は作用の安祥なるを菜根譚48 肝、病を受くれば菜根譚49 福は事少なきより菜根譚50 治世に処しては菜根譚51 我、人に功あらば
【菜根譚】今日の名言